大平憲章

大平宿の中心部に「庚申塚」や「斉藤茂吉の歌碑」にはさまれ、一つの江戸時代の立て看板のようなものがたっています。これは大平憲章といい、昭和57年に、大平保存再生協議会が選定したものです。

無住の里となり10年が経過した頃、市・地権者・のこす会が一体となって大平宿を後世に残すために作られ、その精神にのっとた行動を期し、ここに設置してあるものです。

以下、抜粋いたします。

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大平憲章

1、憲章の目的
 飯田市大平は県民の森や摺古子木山自然園が設置されているように、自然環境の豊かな地域であり、市上水道の水源にあたり、峠越えの古街道と江戸期に発生をみた古宿場集落をのこす、歴史環境として貴重な地域である。
 昭和45年(1970年)の住民集団移住以来、無住の地域として過ごしてきたが、大平宿をのこす会を中心とした民間勇姿による保存と再生の運動が実をむすびはじめ、集団移住集落保存再生のモデルケースとして全国的に高く評価され、ひろく注目を集めるに至った。しかし再生の動きと共に様々な問題もおこりつつある。

 大平保存再生協議会はこうした状況に対応し、大平は飯田市民のかけがえのないふるさとであるとの認識に立ち、全大平関係者の協議組織として発足した。本強gかいは大平の環境を破壊から守り、よりよい地域作りを目指す統一的な指針として、全飯田市民をはじめとして関心をよせる多くの人々によびかけるため、この憲章を制定した。

2、憲章のおよぶ範囲
 大平の集落とその周辺に重点を置き、大平全域を対象とする。

3、地域の整備
 自然保護と歴史環境保全を保存の二つの柱とし、誰もが自然の中で古民家に生活して生活の原体験を学び、歴史的遺産にふれて考え、登山やスキーなどスポーツを楽しむという教育・観光・スポーツをむすびレクリエーション地域として、その再生を位置づける。大平における全ての行為は、これと矛盾するものであってはならない。

4、風致の保全
1)動植物の生態を保護し、水源を守り、地形をみだりに改変しない。
2)建物の修理・改造・新築にあたっては、できるだけ歴史的形態を尊重し、伝統的建材により歴史的風景をみださない色彩とする。
3)環境にそぐわない看板・広告は設けない。

5、環境の整備
1)地域の管理は自主的に行われるのを原則とする。
2)生活の原体験の場としてふさわしくない大型施設や利便設備等の設置は抑制する。
3)施設・設備の設置運用は保存と再生にてらし、充分検討のうえ行う。
4)消火栓・消火器等の防火体制を確立し、誰にでも直ちに使用可能な状態に維持する。

6、憲章の活用
1)この憲章は大平を利用するすべての人にとって自主的に活用されなければならない。
2)大平における土地家屋の売買・土地利用の改変・建物の改修・新築などについては、大平保存再生協議会事務局で受け付け、同理事会および地権者において、私益と公益を合一するため協議すること。
3)憲章の活用につき必要な場合は、飯田市において法的保護や行政的援助の体制をとる。

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 余談ですが、大平宿には庚申信仰はなく、この庚申塚が立った際には「いったいどういう神様なのか?」と議論になったとのことです。

一番左は斎藤茂吉さんの句碑です。大平宿に立ち寄った際に詠まれました。


 雲さむき 天の涯に はつかなる
    萌黄空あり そのなかの山

            昭和11年、暁紅

なお、茂吉は「大平峠」と記した句を17首、詠んでいます。この時の句の一首が木曽見茶屋にも句碑として残されています。

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